「おひとりさま、自分らしく生きる」上野千鶴子さん講演会が開かれました

11月24日(月・祝)、栃木県総合文化センターで
『おひとりさま、自分らしく生きる』
上野千鶴子さん講演会」が開かれました。

当日は秋らしい寒さの日でしたが、会場には多くの方が訪れ、200名規模の会場がびっしりと埋まるほどの熱気に包まれました。栃木民医連も実行委員として準備と運営に関わり、地域の皆さんとともに学びを深める、とても豊かな1日となりました。

上野千鶴子さんが語る、「自分らしく生きる」ためのヒント

開会のあいさつに立ったのは、とちぎ連続学習会実行委員長の天谷静雄さん
「誰もが安心して年を重ね、最期まで自分らしく暮らせる社会を」と語る言葉に、会場の空気があたたまりました。

登壇された上野千鶴子さんは、“おひとりさま”という言葉に込められた偏見や思い込みを、やわらかくほどくように語られました。

「一人で暮らすことは、決して“さみしい生き方”ではありません。
むしろ『気をつかわずに済む自由さ』が、大切なのです。」

そんな上野さんの言葉に、参加者の皆さんはうなずきながらメモを取り聞き入っていました。

一方で、介護保険制度がたび重なる改悪で疲弊している現実にも触れ、それでもこの25年の現場の努力によって“在宅ひとり死”は特別なことではなく、工夫さえ整えば誰もが選べる「自分らしい最期」だと語りました。

そのために必要なのは――

  • 本人の意思
  • キーパーソン
  • 医療・介護の連携体制

どれも人と人とのあたたかなつながりを大切にする、上野さんの言葉でした。

 

パネルディスカッション:「今日の暮らし」「老い」「自分らしさ」をそっと持ち寄る時間

後半のパネルディスカッションでは、宇都宮協立診療所の関口真紀医師、俳人の加登みろくさんが登壇。
進行は栃木県保険医協会の槇事務局長が務めました。

会場から集められた事前アンケートには、「これからの生活が不安」「物価高がつらい」などの声が寄せられ、胸の内を誰かに聞いてほしいという思いが伝わってきました。

 

関口真紀医師:“その人らしい最期”を支える医療とは

関口医師は、在宅医としての経験をやさしい語り口で紹介しました。

「その人らしい最期を支える医療とは」

宇都宮協立診療所の関口真紀医師は、在宅医療の現場で出会ってきた患者さんたちの姿を通して、
「どう生き、どう最期を迎えるか」を静かに、そして力強く語ってくださいました。

どのような経過を歩むかは人それぞれですが、
「自分がどんな最期を迎える可能性があるのかを知ることは、心の準備につながる」と話しました。

■ “家で最期を迎えたい” という願いを支えるために

講演では、在宅で最期まで過ごした患者さんの実例も紹介されました。

がんの患者さんが「家にいたい」と望んだとき、
本人だけでなく、家族の不安、夜間の対応、痛みの調整など、
医療者と介護者が一つのチームとなって支えた経験が語られました。

「在宅医療は、医療だけで完結できるものではありません。
“気持ち”の部分も含めて、一緒に歩んでいく営みです」と関口医師。


■ 延命治療をどうするか――家族だけに決断を押しつけないために

関口医師が特に強調したのは、
元気なうちに、自分の希望を家族に伝えておくことの大切さです。

延命治療をするかどうかは、突然家族に判断が迫られることが多く、その重荷は大きいものです。

「本人が日頃から“こうしたい”と語ってくれていれば、家族は迷いながらも支え合うことができます」

この言葉に、会場の多くの方が深くうなずいていました。


■ 自分らしい最期を選べる社会へ

関口医師は、在宅ひとり死も施設も病院も、
“どれが正しい”ではなく “選択肢” であると語りました。

  • 本人の意思を中心にすえること

  • 家族を支え、地域で支え合うこと

  • 医療と介護が一緒に歩むこと

「どう生きたいかを考えることは、最期の準備ではなく、
これからの日々をどう大切に生きるかにつながります」

関口医師の静かで温かなメッセージは、
多くの方の胸にそっと響く講演となりました。

 

加登みろくさん:俳句がそっと背中を押してくれる

加登みろくさんは、ご自身の人生経験から、俳句と出会ったことで「もう一度、自分を好きになれた」と話しました。

「どんな心もちも、短い言葉にすくい上げてあげると、すこし楽になるんです」

季節のうつろいや、生活のなかの小さな喜びを言葉にしていくこと。それは高齢になっても失われない、「生きる力の種」なのだと感じさせてくれるお話でした。

 

地域で支えあいながら、「自分らしく老いる」社会へ

最後に上野さんは、穏やかな表情でこう語られました。

「一人で暮らすことは、孤独ではありません。
孤立させない地域があれば、“おひとりさま”は自分らしい生き方になります」

医療・介護制度が揺らぎ、生活が厳しさを増すなかでも、人と人のつながり、地域の力があれば、誰もが安心して老いを迎えられます。

今回の講演会と対話は、まさにその温もりを確かめ合うような時間でした。

栃木民医連はこれからも、

  • ひとりにしない地域づくり
  • 本人の思いを大切にした医療・介護
  • 誰もが自分らしく生ききる社会

をめざして取り組んでまいります。