関東地協医学生のつどい in 栃木 2日目
―地域医療を考える―

日時:2025年11月9日(日)
場所:栃木保健生活協同組合 本部
主催:民医連関東地協 医学生のつどい(KIT)
参加:医学生・医師・職員 約30名
講師:鈴木 事務長(生協ふたば診療所)/武井大 医師(宇都宮協立診療所)
目次
- 2日目のテーマ「地域と医療をつなぐ」
- 鈴木事務長講演「カムカム★カフェ ― 暮らしを守るまちの保健室」
- 武井大医師講演「在宅医療と地域のつながり」
- 医学生グループディスカッション
- 学びを未来へ ― 総括とメッセージ
2日目のテーマ「地域と医療をつなぐ」
関東地協医学生のつどい in 栃木の2日目は、「地域と医療をつなぐ」をテーマに開催されました。
前日の大谷フィールドワークと関口医師の講義で学んだ“SDH(健康の社会的決定要因)”の視点を受け、
この日は実際の地域医療実践から「つながりが生まれる現場」を学ぶ一日となりました。
舞台は、生協ふたば診療所が運営する「カムカム★カフェ」と、宇都宮協立診療所の在宅医療・アウトリーチ活動です。
鈴木事務長講演「カムカム★カフェ ― 暮らしを守るまちの保健室」

前半の講師は、生協ふたば診療所の鈴木事務長。
講演タイトルは「つながるカフェ・カムカム ― 暮らしを守るまちの保健室」でした。
鈴木事務長は、地域の人が気軽に立ち寄れる居場所として始まった「カムカム★カフェ」の歩みを紹介しました。
ふたば診療所が位置する宇都宮市緑が丘地区は高齢化率34%を超える地域。
孤立や生活困難を抱える住民も多く、「診療所の外に“ほっとできる場”をつくりたい」との思いから、
介護事業所ふれあいコープと連携して2021年にスタートしました。
「診療だけでなく、“暮らしに寄り添う医療”を実現したい」。
その思いで始まった活動は、今では地域のボランティアや子どもたちも巻き込み、
世代を超えて支え合う“まちの保健室”となっています。
高齢者の健康体操や歌の会、学習支援とみんなの食堂など、多彩な取り組みが続けられています。
鈴木事務長は、印象的なエピソードとして、地域の高齢者Aさん(92歳)の話を紹介しました。
「こんな近くに、こんな場所ができて、自分の人生に大きな意味を与えてくれた」と話すAさん。
のちに認知症が進んだ後も、地域の人々が自然に送り迎えをし合うようになったといいます。
「支える人・支えられる人という関係を超え、互いを思い合う地域の力こそが医療の基盤」と語りました。
2025年には活動場所が一時的に移転するという課題もありましたが、
「場所が変わっても“つながり”を絶やさない」ことを目標に、診療所内での再開を決意。
鈴木事務長は、「思いを持つことが原動力。地域の思いが医療を動かす」と結びました。
武井大医師講演「在宅医療と地域のつながり」

続いて登壇したのは、宇都宮協立診療所の武井大医師。
講演テーマは「在宅医療と地域のつながり」でした。
冒頭、武井医師は
「私にとって医師という職業は“手段”。
困っている人のそばにいるための手段なんです」と語り、学生たちの心をつかみました。
武井医師は、宇都宮の地域医療の現状を紹介しながら、民医連の医師としての姿勢をこう語ります。
「私たちは“排除しない医療”をめざしている。
病気を治すだけでなく、社会から取りこぼされる人を見つけてつなぐのが仕事です。」
在宅医療の現場では、生活困難や孤立を抱えた人々と向き合いながら、
医療と福祉の連携、そして“訪問する勇気”の大切さをお話されました。
特に印象に残ったのは、「アウトリーチ訪問」という実践。
「本人が“来てほしい”と言わなくても、気になったら行ってみる。
扉の向こうに何があるか、行ってみなければ分からない」と話します。
その“行動する医療”に、学生たちは強い感銘を受けました。
医学生グループディスカッション

講演後は、参加者が3グループに分かれてディスカッションを行いました。
テーマは「地域医療の中で自分はどう関わりたいか」。
各班からは次のような意見が共有されました。
「アウトリーチ訪問の話が印象的だった。
“行けば分かる”という姿勢に、民医連の医療の原点を感じた。」(医学生)「どんな専門科でも、困難な事例に他職種と連携して向き合える医師になりたい。」(医学生)
「医師や職員の言葉が患者の人生を左右する。
自分も関わった人の人生を少しでも良い方向にしたい。」(医学生)「何科の医師になるかよりも、どんな医師になるかを考える時間になった。」(医学生)
学生たちは、診療所や地域での実践から、医療の“技術”よりも“まなざし”の大切さを感じ取っていました。
ディスカッションの最後に、武井医師はこう語りました。
「みんなが幸せになる社会づくりをしたい。医師はそのための手段。
困っている人を助けたいという思いを大切にしてほしい。」
学びを未来へ ― 総括とメッセージ

閉会の挨拶では、関東地協医学生委員長の中島医師が次のように語りました。
「KITの良さは、地域の現場に足を運び、実際の医療を肌で感じられること。
今回の栃木での学びを、これからの学生生活や研修に生かしてほしい。」
参加者からは、「地域医療がぐっと身近になった」「いつかここで研修してみたい」との声も多く寄せられました。
二日間を通じて、医学生たちは“医療と社会をつなぐ力”を体感し、
それぞれの未来に新たな視点を得る機会となりました。
(栃木民医連 事務局)
