第17回全日本民医連 学術・運動交流集会 in 東京【1日目】
集会の概要とメインテーマ
第17回学術・運動交流集会は「非戦・人権・ケアの倫理」を掲げ、戦後80年の節目に、憲法の価値と医療・介護における倫理の深化を呼びかけました。
私達は地域での連携と共同を通じ、無差別・平等の医療と介護の実現を目指しています。
初日はオープニングの後、記念講演、午後はテーマ別セッションⅠ〜Ⅲが並行開催される構成となりました。
記念講演 概要(安田菜津紀さん)
紛争地、被災地に生きる人々の声 〜取材から見えてきたこと〜」と題して実施。安田さんはカンボジアをはじめ国内外で難民、貧困、災害の現場を長年取材し、TV等でも発信を続けています。
福島・大熊町から見えた「一人の命」の重さ
東日本大震災で娘さんを亡くし、今も帰還困難区域で捜索を続ける大熊町の木村さん。原発事故により思うような捜索ができない中でも、彼は「ただ一人の家族」と向き合い続けてきました。安田さんは、捜索の現場で見つかった遺骨と遺品が家族にもたらす痛みと救いを、父の語りとともに丁寧に伝えました。
その過程で出会ったのが、沖縄で戦没者遺骨収集を続ける具志堅さん。具志堅さんは木村さんに「一人の命を大切にできない社会が、皆の命を大切にできるはずがない」と語り、翌年には厳冬の福島で共に捜索に立ちました。わずか20分足らずで見つかった遺骨は、家族の記憶をつなぎ直す手がかりとなりました。
沖縄の遺骨収集とガザ取材がつなぐ“非戦”
具志堅さんの活動を通じ、戦争の記憶の継承において「国家の物語」に回収されない一人の尊厳を守ることの意味が語られました。安田さんは、収容所跡や壕で見つかった遺骨の背景にある歴史、そして身元特定に向けた呼びかけを紹介し、加害と被害の両面から戦争の実相に向き合う必要性をお話されました。
さらに、封鎖下のガザで医療や生活が制限される現実を報告。「非戦」とは戦わない宣言に留まらず、誰かの犠牲の上に成り立つ社会構造を変えていく営みだと指摘しました。遠い地の出来事に見えても、私たちの暮らしと地続きであることを、写真に映る子どもたちの表情が静かに物語っていました。
参加職員の声(栃木)
栃木から参加した6名の職員は「現場の声を“自分事”として受け止め直す機会になった」「たった一人の声に寄り添うことが、地域の医療・福祉を支える出発点だ」と感想を寄せました。記念講演は、私たちの日々の実践に“ケアの倫理”を通わせる学びとなりました。
医療と平和をつなぐ私たちの実践
集会テーマは、民医連綱領の「一切の戦争政策に反対し、核兵器をなくし、平和と環境を守る」理念を改めて胸に刻む契機となりました。安田さんの講演は、その理念を顔の見える物語として示し、医療者が目の前の一人に丁寧に寄り添うことが、社会の非戦と人権につながることを教えてくれました。
最後に安田さんは、「遠くの痛みを想像し、身近な場所で行動に移すこと。それが平和をつくる力です」と結びました。私たち栃木民医連も、地域の患者・利用者とともに、この力を日々の現場で育てていきます。