医の倫理を考える夏――奨学生学習会を開催
目次
学びの場を共有して
栃木民医連の奨学生が集まり、夏の平和活動を振り返り広島原水爆禁止世界大会や長野反核医師の会 学生部会に参加した経験を持ち寄り、写真のように和やかな雰囲気の中で報告と意見交換を重ねました。
「医療と平和」「人のいのちに向き合う姿勢」を、自分ごととして考える時間になりました。
広島原水禁大会で感じたこと
広島・呉で見た軍需産業の跡や、各地の平和資料に触れ、
町が背負ってきた「軍都」と「平和都市」の二面性を考えました。
被爆の悲劇を学ぶと同時に、加害の歴史にも目を向ける必要性を感じました。
「医療者の立場から加害の歴史を考えたことがほとんどなかった」との声もあり、
医の倫理の原点を見つめ直す契機となりました。
長野反核医師の会 学生部会に参加して(無言館・松代大本営跡)
長野では戦没画学生の作品を収める無言館を訪れました。
一枚の絵が伝える「生きたかった日常」に、参加者は静かに立ち尽くしました。
また松代大本営跡では、巨大な掘削トンネルに触れ、
戦争が人と地域を丸ごと巻き込んだ現実を体感。
「今学べる環境への感謝を忘れず、学び続けたい」という前向きな感想も寄せられました。
731部隊と医の倫理
旧満州で行われた731部隊の人体実験について議論しました。
凍傷実験など非人道的な行為が「研究」の名で正当化され、
戦後も十分に検証・反省されなかった歴史は、医療者を志す私たちに重くのしかかります。
「ドイツでは加害の歴史を教育として継承しているのに、
日本では可視化が不十分だ」との指摘も。
科学の進歩を理由に人権が踏みにじられた過去を学ぶことは、
現在の臨床・研究倫理を守るための土台であると確認しました。
満蒙開拓と加害・被害の視点
生活苦の中で旧満州へ渡った人々が、敗戦で過酷な引き揚げを強いられた満蒙開拓。
日本人の被害だけでなく、中国の人びとが受けた被害、
そして日本が加害者でもあった事実を多面的に学びました。
参加者からは、家族の引き揚げ体験が語られ、歴史が身近な記憶と結びつきました。
「被害と加害は同時に起こり、状況を客観視するのは難しい。
だからこそ学び続けたい」という声が印象的でした。
学びのふりかえり
「表面的に知っていた出来事の奥行きを知った」
「戦争の被害と加害、どちらも学ぶことが大切」
「医師の倫理観を、戦争の歴史から考え続けたい」
――そんな感想が多く寄せられました。
今回の学習は過去を暗記するためではなく、
今の自分がどんな医療者をめざすのかを問い直す試みでした。
歴史に学び、人の尊厳を守る医療を実現するために、
私たちは対話と検証を重ね、学びを次の実践へつなげていきます。