平和学習フィールドワーク ―大谷・平和観音を訪ねて―
栃木民医連ジャンボリー実行委員会では、この夏の活動の一環として、宇都宮市大谷地区にある「平和観音」や戦没者慰霊碑を訪ね、平和学習のフィールドワークを行いました。実行委員会のメンバーにとっても初めて足を運ぶ人が多く、「こんな身近にこれほど大きな平和のモニュメントがあったのか」と驚きと学びのある機会となりました。
大谷の自然と石文化の中に立つ平和観音
宇都宮市の西部、大谷地区は大谷石の産地として広く知られています。石を切り出した巨大な岩壁に囲まれるようにして建つのが、高さ27メートルの「大谷平和観音」です。戦後間もない1954年、戦争で犠牲となった人びとの冥福と平和を祈念して、地元の石工たちの手により彫り上げられました。その姿は観音菩薩が静かに手を合わせ、人々の平安を祈っているように見えます。
初めて目にしたメンバーからは「思っていた以上に大きく、圧倒された」「静かに佇む姿に、戦争の犠牲を思いながら心を合わせる時間となった」との声が寄せられました。
「慰霊之塔」に刻まれた名前の重み
平和観音の近くには「慰霊之塔」が建立されています。石碑にはこの地域から戦地に赴き、命を落とした多くの人の名前が刻まれており、実際に文字を目で追うと、一人ひとりの人生の重みを感じざるを得ません。
参加者のひとりは「刻まれた名前の数を見て、こんなに多くの方が戦争に駆り出されて亡くなったのだと実感した」と語り、また別の参加者からは「栃木県に住みながら、こうした場所があることを意識していなかった。実際に訪れ、学ぶことが大切だと思った」との感想がありました。
慰霊碑の前では、自然と手を合わせる姿も見られました。私たちの身近な地域からも戦争の犠牲者が出たという現実を目の当たりにすることは、平和の意味を自分ごととして考えるきっかけとなりました。
ガイドと共に学ぶことで見えてくるもの
今回の見学では、地元の歴史や建立の経緯を知る方から話を聞くこともできました。例えば「石碑の建立には地域住民の強い願いが込められていたこと」「大谷の地下には広大な石切り場跡が広がり、現在も空洞が残っていること」など、単なる観光では気づけない背景を学ぶことができました。
参加者からは「ただ大きな観音像を見て終わるのではなく、その歴史的背景を知ることで深く理解できた」「ガイドの方の話を通して、ここに生きた人びとの営みや思いを感じられた」との声がありました。
身近な土地に刻まれた戦争の記憶
宇都宮市中心部から車で30分ほどの距離に、これほど大きな戦争慰霊の場があることに改めて驚かされました。「遠くの歴史遺産ではなく、私たちの生活圏の中に戦争の記憶がある」と実感することは、平和を考える上で非常に大切なことです。
「普段の生活の中では戦争を意識することが少なくなっているが、こうして実際に現地を訪れることで、犠牲になった方々の存在や平和の尊さを改めて感じることができた」との感想も寄せられました。
平和な社会があってこその地域医療
栃木民医連が取り組む地域医療や福祉の活動は、平和で安心できる社会の上に成り立っています。戦争によって人びとの生活や健康が奪われることを歴史から学ぶことは、私たちが日常の医療活動を行う上でも忘れてはならない視点です。
今回のフィールドワークを通して、ジャンボリー実行委員会のメンバーは「平和の大切さを心に刻み、これからの活動にも生かしたい」という思いを共有しました。身近な土地に刻まれた戦争の記憶を学び継承していくことは、未来の世代に平和を手渡す第一歩となります。
おわりに
大谷の石の文化とともに存在する平和観音や慰霊碑は、戦争の悲惨さを伝え、平和を願う象徴です。私たちは今回の学びを大切にし、医療活動と同じように「平和を守る取り組み」を続けていきたいと思います。