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原水禁世界大会に向けて──宇都宮の空襲を題材にした紙芝居で「戦争」を考える

来週、広島で開催される「原水爆禁止世界大会」を前に、栃木民医連では、平和の大切さを見つめ直す学習会を行いました。その中で、宇都宮空襲を題材とした紙芝居の読み聞かせが行われ、参加者一人ひとりが、地域に起きた戦争の記憶に耳を傾けました。

 

 

地元に伝わる記憶──昭和20年4月12日の宇都宮空襲

紙芝居の題材となったのは、1945年4月12日に起きた宇都宮大空襲。当日は朝から雨が降っていたため「今日は空襲はない」と多くの人々が安心して眠りについていました。しかし、警報も鳴らないまま、B29による爆撃機が飛来し、宇都宮の町は一夜にして焼け野原となりました。

紙芝居は、その日を実際に体験した市民の視点から描かれ、突然の爆音、燃え上がる街、焼夷弾の嵐、田川に飛び込んで命を守ろうとする人々の必死の逃避行などが、臨場感たっぷりに語られました。逃げ惑う中で家族を失った話や、防空壕から川に逃げたものの、油に火がついて流れてくる炎、漂流する亡骸の光景…。参加者はまるでその場にいるかのような迫力とともに、戦争の恐ろしさと残酷さを心に刻みました。

 

 

紙芝居を語り継ぐということ

今回、紙芝居を読み聞かせてくださったのは、宇都宮市在住のSさん。この紙芝居は、地元在住の大野さんがご自身の戦争体験をもとに栃木弁で語り、手作りで作成されたものです。現在93歳の大野さんは、長年にわたり保育園や小学校、大学などさまざまな場で平和の語り部として活動されてきました。

しかし近年、ご高齢により活動が難しくなったことから、その意志を引き継ぎ、紙芝居を用いた語り継ぎを担ってくださることになりました。「自分に務まるか不安もあるが、語り継ぎを絶やしてはいけない」という強い思いで、今回の取り組みに臨んだと語ってくださいました。

紙芝居に描かれた宇都宮空襲の記憶は、単なる過去の出来事ではありません。市民の暮らしの中に突然襲いかかった戦争のリアルな恐怖と悲しみ、そしてその後の復興の苦労までが、一枚一枚の絵と語りに込められています。

 

 

「忘れない」ことから始まる平和の一歩

紙芝居の語りのあと、参加者全員で「平和カレー」を囲みながら感想を共有し、改めて戦争の悲惨さと平和の大切さについて話し合いました。

終戦から80年近くが経とうとする今、戦争を直接体験した方の声を聞ける機会は少なくなっています。だからこそ、地域に残る「語り」を受け継ぎ、若い世代に伝えていくことの意味は非常に大きいものです。

今回の紙芝居を通して、原水禁世界大会への参加者たちも、自らの地域で起きた戦争の記憶を胸に、広島の地で「核も戦争もない未来」を訴える決意を新たにしています。