【活動レポート】第8回 MIN-IREN FESTIVAL 2日目

かつての奨学生が今、医学生に伝えたいこと

講演:伊藤先生(小豆沢病院 医師)/クロストーク:伊藤先生 × 奥野先生(立川相互病院 医師)

2025年6月1日、全国の医学生や職員が参加する「第8回 MIN-IREN FESTIVAL」が開催されました。今年も、社会の中で生きづらさを抱える人々に寄り添う医療について学び合うこの場に、たくさんの奨学生や若手医師たちが集いました。

東京民医連・小豆沢病院で働く伊藤先生は、自身もかつて奨学生として活動していた経験をもとに、学生時代から現在に至るまでの歩みを語りました。


「この世界に、見えない困難があることを知ってほしい」

伊藤先生が紹介したのは、在留資格のない仮放免状態の外国籍の患者さんや、年金だけでは暮らせず脱水症で運ばれる高齢者、暴力や貧困の中で生きる若い女性たちの実例でした。

「医学的には治療できても、本当に助けられたと言えるのか?」
この問いを医学生たちに投げかけた伊藤先生。

制度のはざまで必要な医療が届かない現実。
“目の前の人を診る”という医療の本質が、社会構造によって揺らいでしまうことを、強い言葉で訴えました。


「感情が動いたなら、それを大切にしてほしい」

学生時代、自身も「社会の端っこに落ちないように」と医師を志したと語る伊藤先生。
そんな彼が民医連での出会いを通して変わっていった過程には、多くの学生が共感を寄せていました。

「ディスカッションは、正解を出すためじゃない。自分の感情を深めていく時間なんです」

奨学生時代に参加したハンセン病施設でのフィールドワークや、夜の街で困難を抱える若者たちへの支援活動が、自らの生き方を問い直す原体験になったことも語られました。


クロストーク「誰かのために動く先輩たちを見て、憧れた」

講演に続いて行われた奥野先生とのクロストークでは、学生時代のエピソードから、実際の医療現場での苦悩と希望まで、率直なやりとりが続きました。

印象的だったのは、「困難な状況にある人が見えない社会構造」の話題。

「医療費3倍と言われて診療を諦める人がいる。
それを“いないこと”にしてはいけない」

お二人のやりとりから、医療者としてのまなざしと姿勢の大切さが伝わってきました。


「感じたことを、感じたままに、考えてみてください」

最後に伊藤先生は、会場の学生たちにこんな言葉を贈ってくれました。

「困っている人を“かわいそう”と思うよりも、
『よくここまで生きてきたね』と、その人の強さに目を向けてほしい。
感じたことを大切にして、いつか一緒に働けたらうれしいです」


医療と社会をつなぐ学びの場として

今回のフェスティバルでは、社会の中にある格差や不平等に向き合うことが、医療を学ぶ上でいかに重要かを、改めて教えてもらいました。

民医連は、医師だけでなく、看護師や事務、MSWなど多職種が一丸となり、「ここなら何とかなる」と言われる医療をめざして日々奮闘しています。

医療の原点に立ち返り、仲間とともに学び合える場として、今後も民医連は学生の皆さんを応援していきます。