「人間らしく働く」ことを考える学習会を開催
~労働と健康、そして社会のあり方を見つめて~
2025年6月、栃木民医連では「人間らしく働こう」をテーマに、動画視聴を取り入れた学習会を行いました。今回の学びでは、労働環境が人々の暮らしや健康に与える影響を多角的に捉え、参加者の間で活発な意見交換が行われました。医学生4名・薬学生1名と職員1名が参加し、それぞれが自らの経験や想いを重ねながら、社会の現実と向き合う貴重な時間となりました。
◆ 学習内容
今回の学習会では、以下のテーマを中心に、統計データや動画資料を通して深く掘り下げました。
- 職業によって異なる死亡率や健康格差の現実(図12・図15など)
- 長時間労働が引き起こす健康リスクと社会的影響(図13・図14)
- 非正規雇用の増加と、それがもたらす暮らしの不安定さ
- ロシアの社会制度と平均寿命の変遷から見る、制度の力とその崩壊のインパクト(図17)
さらに、動画視聴では、子育て世帯の貧困とフードバンクの取り組みを取り上げ、制度と現場の両面から学びを深めました。
【貧困】”一箱の食料”届け続ける フードバンクが支える”扉の中のSOS”『Nドキュポケット』NNNセレクション
◆ 参加者の声:気づきと発見があふれた瞬間
- 「人間らしく働こう」の項目を読んで、飲食店を営んでいた祖母の姿が重なりました。健康的な生活ができず糖尿病を患ったことを思い出し、労働が命を削ってしまう現実を改めて突きつけられました。
- 相対的貧困という言葉を初めて知りました。7人に1人の子どもが貧困状態にあるという現実は衝撃的で、支援の大切さを胸に刻みました。
- 「食べ物ひとつで心が明るくなる」——動画のなかでのこのメッセージに、ハッとさせられました。支援の力を実感しました。
◆ 全体を通しての振り返り
- 民フェスの講演で語られていた「自分ごととして考える」大切さが、今回の学習で一層実感できました。SDH(健康の社会的決定要因)を多面的に学び、考えの幅が大きく広がりました。
- ソ連崩壊後に社会保障制度が失われ、平均寿命が急落した事実には驚かされました。制度の有無が命に直結することを、データが雄弁に語っていました。
- 自分も裕福とは言えない家庭で育ちましたが、それ以上に厳しい状況にある人々の存在に触れ、社会の構造を根本から見直す必要性を痛感しました。
- 「お金がないと進学できない」現実に、教育の公平とは何か、深く考えさせられました。
◆ 次への一歩に向けて
「福祉や教育に力を入れている北欧の仕組みを学びたい」といった声も寄せられ、参加者たちの学びは次の探究へとつながっています。今回の学習が、将来医療・福祉の現場に立つ彼らにとって、社会を見るまなざしと行動の芽を育む契機となったことは間違いありません。
働くことの意味、社会のあり方、そして人間らしさとは何か——。
この問いに向き合う旅は、すでに始まっています。