過去と向き合い、今を問う
― 長崎人権平和資料館を訪ねて ―
2025年4月9日、私たちは長崎市内にある長崎人権平和資料館を訪れました。この資料館は、原爆による被害とともに、日本がかつてアジアで行った侵略と加害の歴史を、具体的な証拠とともに伝えている貴重な場です。展示や職員の方の解説を通じて、「平和とは何か」「戦争とは何だったのか」をあらためて深く考える機会となりました。
「大東亜戦争」の名のもとに広がった加害の実相
館内の大きな壁一面には、日本軍がアジア・太平洋全域に展開した「大東亜戦争戦図」が示されており、各地での日本軍の侵略と加害行為が写真とともに記録されています。
- 上海に突入する日本兵の姿
- 毒ガス演習や人体実験を行う様子
- 処刑された朝鮮人、遺棄された中国人の遺体
- シンガポールでの大量虐殺(「大検証」)
- ビルマ・タイ間の「死の鉄道」建設によるアジア人・連合軍捕虜の死
- 南方での飢餓や性的奴隷化(いわゆる「慰安婦」問題)
これらの展示は、日本が「解放者」を名乗りながら、実際には各地で支配・搾取・暴力・差別を繰り返していた事実を赤裸々に示しています。
展示中央には「大東亜共栄圏」というスローガンの下で進められた軍事支配の全体像が地図で示され、その実態が**「共栄」ではなく「侵略と支配」であったこと**が明確に語られています。
日本軍「慰安婦」制度の展示と資料
別コーナーでは、日本軍「慰安婦」制度に関する詳細な年表や解説パネルが展示されていました。
「慰安婦は性奴隷であり、強制だった」とする政府認定(河野談話)に基づき、女性たちが居住の自由、外出の自由、拒否する自由すら持たなかったことが資料で示されています。
詐欺や甘言による連行も「強制連行」であると明記され、国際社会がいまも日本政府に対し、謝罪と補償を求め続けている現状についても、丁寧に解説されていました。
戦後も続く構造的差別と記憶の継承
戦後補償が不十分なまま放置され、在日朝鮮人や被爆した外国人への差別が今も続いていること。
また、資料館の過去の館名に関わる人物が性暴力を行っていたことが明らかになり、展示を再編成した経緯など、歴史を問い直す姿勢そのものが資料館の在り方に表れていました。
2025年、被爆80年の節目に ― 世界大会への参加を呼びかけます
2025年は、広島・長崎への原爆投下から80年。いま、世界では核兵器使用の危機がかつてなく高まっています。
この節目の年に、私たちは「ノーモア・ヒロシマ」「ノーモア・ナガサキ」「ノーモア・ヒバクシャ」の声を、世界に向けて力強く発信したいと思います。
私たちは、8月3日~9日に広島・長崎で開催される「原水爆禁止2025年世界大会」に参加します。
大会テーマは、
「被爆者とともに、核兵器のない平和で公正な世界を ― 人類と地球の未来のために」
です。
大会への参加、地域・団体からの代表派遣、署名や原爆展の開催、平和行進など、さまざまな形での取り組みへのご協力を、心より呼びかけます。
加害と被害、歴史と今をつなぐ
職員の方の最後の言葉が心に残っています。
「私たちは“過去を学ぶ”ためだけにここに来たのではありません。“今の自分たち”を見つめ直すために、過去と向き合ってほしいのです。」
展示のひとつひとつは、ただ過去を語るものではなく、「今」を生きる私たちへの問いかけでした。
戦争と平和、人権と差別、記憶と行動―
そのすべてを胸に刻み、次の世代へと引き継いでいきたいと思います。