医療の仕事ってこんな感じなんだ!
~高校生が見て、聞いて、感じたリアルな体験~
2025年春、栃木民医連では高校生を対象に、医療職業体験プログラムを開催し50名以上の高校生が参加しました。
この取り組みは、地域の医療現場を実際に見学・体験することで、医療の仕事に対する理解を深め、将来の進路選択に役立ててもらうことを目的としています。
今回の体験では、医師・看護師・薬剤師の3職種をテーマに、現場の空気や雰囲気を直に感じながら、医療の多様な側面に触れる機会となりました。参加した高校生たちは、ただ“職業を知る”だけでなく、「人と向き合うとはどういうことか」「チームで支える医療とは何か」を、五感を通して学びました。
医師体験|“診る”とは、病気だけでなく「人」と向き合うこと
宇都宮協立診療所で行われた医師体験では、まず診療所の紹介映像を視聴し、地域医療の役割や民医連の理念について理解を深めた後、院内を見学しました。実際の外来診察に同席し、患者さんと医師の会話や診療の流れを間近で見学。また、放射線技師による検査やレントゲンの説明を受け、診療に関わる様々な職種の仕事も知ることができました。
特に印象的だったのは、医師が患者さん一人ひとりの背景や生活に配慮しながら、丁寧に言葉をかけていた場面です。診察室での会話の中には、診断だけではなく、不安を和らげるような優しい言葉や励ましも込められており、まさに“寄り添う医療”を感じる瞬間でした。
「症状だけでなく生活のことや家庭の様子まで聴き取っていて、まさに“人を診る”医療だと感じました」
「“自分の専門じゃないから診られない”ではなく、一緒に悩んで考える姿勢に、医師としての人間味を感じました」
また、診察の合間には、医師からの話として、医療制度の隙間にある人々への支援や、無料・低額診療制度の取り組みについても紹介されました。参加者は、医療の“手の届かないところ”が存在することを知り、それを補おうとする医療者の姿に心を動かされていました。
「医療が十分に届かない人がいることを初めて実感しました。そんな人たちを支える医師の存在が、どれほど社会にとって大切かを感じました」
看護体験|“支える”しごとの奥深さとあたたかさ
看護体験は、宇都宮協立診療所および生協ふたば診療所にて行われました。参加した高校生たちは、ベッドのシーツ交換、車椅子の介助、血圧測定、聴診器の使用などを実際に体験。さらに、看護師による医療器具の説明や、患者さんとの接し方についての話を聞きました。
現場では、患者さんのそばで働く看護師の姿を間近に見ることができ、日々の業務の中にある配慮や思いやりの大切さを肌で感じることができました。コミュニケーション力や観察力、そして常に冷静さを保つ姿に「かっこいい!」という声もあがりました。
「看護師さんの笑顔や声かけひとつで、患者さんが安心しているのが伝わってきました」
「ただ作業をこなすのではなく、情報共有やダブルチェックを大切にしていて、責任ある仕事だと実感しました」
ふたば診療所では、リハビリの様子を見学し、師長からは“地域に根差した医療”の考え方や、訪問看護の実際についての説明も受けました。日常生活の支援や、人生の最期を迎える場面における看護のあり方など、命と向き合う場面にも触れるお話に、参加者の表情は真剣そのものでした。
「看護師は医療的ケアだけでなく、精神的・社会的なサポートも担っていることを知り、すごく広い視点の仕事だと気づきました」
薬剤師体験|“薬を通して寄り添う”医療の専門職
薬剤師体験では、調剤薬局や調剤室の見学を通じて、薬剤師の専門的な仕事について学びました。薬の保管方法、劇薬・毒薬の扱い、処方箋に基づいた薬の調剤体験などを通して、薬剤師の役割の重要性と責任の重さを実感することができました。
見学中には「この薬は冷蔵保管が必要」「服用時間によって効果が変わる」など、プロの知識が飛び交い、参加者たちは真剣にメモを取っていました。また、服薬指導の模擬体験では、患者さんへの伝え方の難しさや、信頼関係の大切さにも気づいたようです。
「薬剤師さんも患者さんの“なぜ飲めなかったのか”という背景に寄り添っていることを知り、驚きました」
「患者さんの声を丁寧にくみ取り、治療に貢献している姿がとても印象的でした」
さらに、薬剤師は医師の補助的な立場ではなく、医療チームの一員として、自らの専門性を活かし、患者さんの生活や健康を支えている存在であることも体験を通して理解が深まりました。
「薬を扱うだけでなく、患者さんの心や生活を支える力があるんだと気づきました。私も将来そんな薬剤師になりたいと思いました」
体験を通して広がる“未来のかたち”
医師・看護師・薬剤師、それぞれの職種に触れた参加者たちからは、「思っていた以上に人との関わりが大きい仕事だと感じた」「どの職種もチームで連携して医療を支えているのがよくわかった」といった感想が多く寄せられました。
「たくさんの職種の方が、それぞれの立場から患者さんを支えていて、医療って“人の輪”でできているんだと感じました」
「普段の診察では見えなかった部分がたくさんあって、自分の中の医療のイメージが大きく変わりました」
体験を通して、「将来は医療に関わる仕事がしたい」「地域医療を支える一員になりたい」といった、前向きな声や志望の芽生えも多く見られました。参加した高校生たちにとって、この体験は“医療のしごとってこんな感じなんだ!”と実感する、等身大の第一歩になったようです。
栃木民医連は、これからも
医療の現場は、人と人との信頼と対話の中で成り立っています。
栃木民医連では、こうした体験を通じて若い世代が医療の魅力や社会的な役割を知り、自らの将来と真剣に向き合うきっかけを提供していきます。
医療を通して誰かの力になりたいと願うすべての若者に、現場のリアルを届けていけたら——。
そんな想いを込めて、今後も体験企画を継続し、地域とともに歩む医療を広げてまいります。
この医療体験が、未来の医療を担う若者たちにとって、大きな一歩となることを願ってやみません。