ようこそ医学部へ
医学部新入生歓迎「地域医療学習会」を開催しました
4月5日(土)、栃木民医連では、医学部の新入生の合格と入学をお祝いする「地域医療学習会」を開催しました。
当日は、医学部1年生と在校生が参加し、講師には宇都宮協立診療所で総合診療医として活躍されている武井大(たけい・だい)先生をお迎えしました。
会場となった学生サポート室は、春の暖かさと参加者の期待に満ちた空気に包まれ、初対面同士の交流も自然と生まれる、和やかな雰囲気の中で始まりました。
離島から地域の診療所へ――医師としての歩み
武井先生は、自治医科大学を卒業後、東京都の離島医療に従事。医師としてのキャリアのスタートを、診療所という最前線での医療から始められました。
島に一人で赴任し、限られた医療資源の中で診察・治療・判断を行う日々。搬送にも時間がかかる中、「今ここで何ができるか」という視点が問われ続ける現場だったといいます。
現在は、宇都宮協立診療所で、在宅医療や訪問診療も含めた地域密着型の医療に従事。日々、患者さん一人ひとりと向き合いながら、病気だけではなく、その人の人生や生活背景ごと丸ごと受け止めるような医療を実践されています。
「伝える」と「届く」は違う――
医療者にとってのコミュニケーションとは?
学習会の中盤では、武井先生から「コミュニケーションの難しさと大切さ」について、実際のエピソードを交えてのお話がありました。
「コミュニケーションも、学ぶ“技術”のひとつ」
「正しい情報を伝えるだけでは、患者さんの心に届かないこともある」
先生は、自らの経験を振り返りながら、伝えたはずの言葉が患者さんに届かず、誤解や不信感を生んでしまった場面についても率直に語ってくれました。
「患者さんの背景や気持ちに配慮しながら、どう伝えたら“伝わる”のか。どうしたら“届く”のか。医師の“伝え方”にも日々工夫が必要なんです」
その言葉は、参加した学生たちに深く響き、多くの感想にも表れていました。
参加者からの感想より
「患者さんの人生に寄り添いながら、社会的背景を考えて医療を提供できることがすごいと思った。医師と患者という関係以前の大事なことを考えさせられた」
「コミュニケーションというものは“培うもの”“学ぶもの”という意識がなかった。これからは、いろいろな経験を重ねて、コミュニケーションを“技術”として学んでいきたい」
「総合診療や家庭医など興味ある分野についてお話が聞けて勉強になった。実際にあった事例をもとに、コミュニケーションの大切さを改めて感じた」
医療の専門知識を身につける以前に、患者さんとの関係性づくり、伝え方の工夫、信頼の積み重ねがどれほど重要か
その気づきが、新入生の胸にしっかりと刻まれたようです。
“医者になる前に”出会えてよかった
「医者として何を大切にしたいか」
「診察室に来るまでの患者さんの人生をどう想像するか」
武井先生のお話は、医学部に入学したばかりの新入生にとって、これから始まる6年間の学生生活をどう過ごすか、どんな医師を目指して学んでいくかを見つめ直す大切なきっかけになったようです。
在校生にとっても、「総合診療ってこういう医師のあり方なんだ」と、自分の進路に対して新たな視点を持つきっかけになったという声がありました。
また、終了後も先生と参加者との対話は続き、「医療に関心を持ったきっかけは?」「高校時代はどんなことをしてた?」「今、どんな医師を目指してるの?」といった率直なやりとりが交わされました。
新入生にとっても、在校生にとっても、普段はなかなか聞けない実際の医師の考えに触れる時間となり、緊張もほぐれ、会場には笑顔があふれていました。
これからの一歩を、地域医療とともに
医師を目指す道のりは、時に悩んだり迷ったりすることもあるかもしれません。
けれど、今回のように地域で働く医師のリアルな声に触れ、対話を重ねていくことで、自分の目指したい医師像や医療のあり方が、少しずつ見えてくるはずです。
栃木民医連では、医学生・高校生を対象とした地域医療体験や学習会、訪問診療同行などの企画を随時開催しています。
「地域医療を見てみたい」「医師の仕事に触れてみたい」という方は、ぜひお気軽にご連絡ください。
お問い合わせ・お申込み
栃木県民主医療機関連合会(担当:工藤)
080-5419-8040
栃木県宇都宮市宝木町2-1028-17